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記者資料提供(2025年3月5日)
地方独立行政法人神戸市民病院機構
神戸市立医療センター中央市民病院において実施した投薬を起因とする死亡事案が発生したことから、病院運営の透明性と医療安全の徹底の観点に基づき、事案の内容を公表いたします。
なお、公表に当たっては、患者ご本人及びご家族が特定・識別されないよう、個人情報の保護に最大限の配慮を行っています。
1.発生日時:2024年12月
2.患者:神戸市内 男性(70歳代)
3.事案の内容
(1)病状について
尿管癌に対し腹腔鏡による腎尿管・リンパ節を摘出する手術を行ったが、摘出した組織の顕微鏡検査にて、再発のリスクが高いと判断され、再発予防目的に化学療法を行っていた。
(2)化学療法について
がん細胞が有している「免疫の攻撃を回避する仕組み」を弱める薬(免疫チェックポイント阻害薬/ニボルマブ「商品名:オプジーボ」)を投与することで、がん細胞の増殖を抑える治療を行っていた。免疫チェックポイント阻害薬には様々な副作用があるため、投与前に毎回血液検査を実施し、減量・中止基準値ではないことを確認する運用になっている。
(3)事案の発生経緯
2024年12月の投与前の血液検査において、肝酵素(肝臓の細胞中に含まれる酵素であり、血液中の濃度を測定することで肝機能の状態を把握している。)が中止基準値を超えていた。
この投与基準を超えた検査結果に主治医は気付いていたが、同時に生じた腎臓・甲状腺に対する障害の対応をしたところで肝障害についての対応を失念し、投与の指示を出した。また、監査の役割を担う薬剤師においても処方内容と血液検査を確認したが、気付けなかった。
2025年1月の外来受診時に免疫チェックポイント阻害薬による副作用である肝機能の障害が疑われ、緊急入院したことで上記事案が発覚した。
(参考)
2024年7月 | ・他院にて水腎症を指摘され当院紹介受診 |
2024年8月 | ・尿管鏡検査施行し、病理検査にて尿管癌の診断 ・術前化学療法開始 |
2024年11月 | ・ロボット支援腹腔鏡下腎尿管全摘除術施行 |
2024年12月 | ・術後化学療法として免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ)を投与 ・2週間後の投与時の採血検査にて、肝酵素の数値が異常値を示していた ・免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ)を投与 |
2025年1月 | ・免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ)の投与予定日に受診 ・体調不良の訴えがあり、採血検査にて肝酵素の著明な上昇を確認 ・肝障害へのステロイドパルス療法(ステロイドの点滴注入)のため入院 ・腎機能悪化し血液透析開始 |
2025年2月 | ・臓器障害の改善の見込みがなくなり緩和的治療へ移行 ・緩和的治療へ移行した3日後に死亡 |
1.主治医は免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ)投与前の採血検査で肝酵素(AST・ALT)の値がガイドライン上の中止基準値を超えていたことを確認していたが、肝障害とともに腎障害・甲状腺機能障害が認められており、これらの対応をしたところで肝障害についての対応を失念した。
2.薬剤師も調剤前の監査で免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ)の中止基準値を上回っていることに気付けなかった。
1.実施済みの取り組み
・化学療法を実施している診療科に対する文書による周知徹底
・監査体制の強化(午前中の1名増員と応援体制の構築による多忙時の1名増員)
2.実施に向けて検討・調整中の防止策
・化学療法を実施する医師への再教育
・電子カルテ上の検査結果表示のアラート機能を強化(化学療法の項目を特出し)
・電子カルテ上で医師へ再確認を行う仕組みを構築(化学療法時の二段階認証の導入)
・監査時に使用する薬剤部門システムの改修によるアラート機能の導入
・化学療法の実施時間帯の分散化(午前中に集中する傾向を改善)
・化学療法実施前の問診強化と実施後の電話相談体制の強化