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『都市計画や防災計画に資する、「富岳」を活用した デジタルツインシミュレーション』の社会実装に向けた取り組み 〜神戸駅周辺地域の垂直避難に関する検証〜

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記者資料提供(2025年1月17日)
企画調整局調整課
神戸市と株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)、理化学研究所(以下、理研)計算科学研究センター(以下、R-CCS)は、阪神・淡路大震災の発生から30年の節目となる本日、3年にわたり取り組んできた『都市計画や防災計画に資する、「富岳」を活用したデジタルツインシミュレーション』の進捗と成果について発表します。

1.今年度の主な取り組み:神戸駅周辺地域における防災計画の検証

今年度は、神戸駅周辺地域の防災計画で定めている基本方針に基づいて、垂直避難を行った場合の避難者受入れ施設の収容人数や避難にかかる時間などの検証をはじめ、垂直避難と水平避難が混在した複合的なシミュレーションを行いました。その結果、改善策により最大で、避難時間が70%、混雑緩和が20%低減できる箇所があることがわかりました。

2.津波災害を想定したシミュレーション条件および結果

津波警報発令時に対象エリアの来訪者が一斉に移動することを想定し、避難者受入れ施設の収容や避難にかかる時間等に着目。実際の建物の入り口や階段、歩道の幅などをデジタル空間に作成し、精緻な街を再現しました。また、要援護者を考慮してシミュレーションを実施することで、これまでよりも精度の高いシミュレーション結果に基づいて議論・対策を練ることが可能となり、下記3点が、より円滑な避難を行う上で有効な手段であることがわかりました。また、避難先がさらに増えることにより、スムーズに避難できることが見込まれます。
<シミュレーション実施条件>
・対象エリア:神戸市中央区国道2号以南東エリア(神戸駅周辺地域)
・想定災害:津波
<シミュレーションにより得られた主な結果>
①域内駐車場スロープを歩行者避難に活用、車両進入禁止にすることで、避難時間が最大約70%短縮され、津波到達予想時刻までに域内避難を完了できることがわかった。
②防災計画で規定されていない北側エリアのルートを新たに用いると、避難時間が約60%短縮することがわかった。
③域内のビル1棟を避難先対象として新たに開放すると、周辺道路の混雑が約20%緩和されることがわかった。
 

3.防災計画への反映

神戸市危機管理室では地域を巻き込んで行動変容を起こすべく、シミュレーションの結果をハーバーランド協議会のワーキンググループで提示し、協議会関係者に対し垂直避難の実際的な活用を念頭に、データに基づく政策決定(EBPM※1)を今後すすめられる環境をつくることができました。

4.これまでの振り返りと今後の展望

神戸市、ドコモ、理研の3者で取り組んできたこの3年間で、1年目は街の実態を把握するため、道路など細部の地図に対して人の動きを落とし込む作業を実施しました。2年目はその情報をシミュレーション条件として整備し、あらゆるパターンを用いて市内の混雑箇所の特定や一時退避施設の出入口設定など、神戸市の防災計画や帰宅困難者対策への反映を実現しました。3年目はこの報道発表で示すとおり、シミュレーション条件として、2年目までに実施した水平避難に加えて、新たに垂直避難の要素を入れた取り組みを推進してきました。今後はこの知見をもとに神戸市と同じような地理的、人口的特性をもつ他自治体への展開を視野に取り組んでいきます。

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5.参考

<プロジェクトの取り組み背景と各者の役割>
 ドコモは、人々の生活がより豊かになる技術の価値検証をパートナーと実施する「ライフスタイル共創ラボ※2」を推進しています。今回は、神戸市と「交通×防災」の社会課題に着目し、神戸市の再整備に合わせた快適な交通や災害に強い街づくりに向けて取り組みを進めています。
理研のR-CCSは、スーパーコンピュータ「富岳」の運用主体であり、また「計算科学」の世界トップレベルの研究センターとして活動しており、「富岳」を用いた計算科学により政府が進めるSociety 5.0実現を加速すべく、さまざまな分野で社会実装に向けた取り組みを積極的に行っています。今回は特に兵庫県及び神戸市から支援を受けている「研究教育拠点(COE)事業※3」を活用し本取り組みを行っています。
1年目は、三宮周辺地区の再整備が進む中での街の実態に応じた検証を開始しました。2年目にあたる昨年度は、主に『交通』『防災』をテーマに、災害発生時に帰宅困難者が一斉に移動した場合の混雑状況の可視化や帰宅困難者をはじめとする避難誘導に焦点をあてた人流シミュレーションを実施しました。
 
   
神戸市 ・シミュレーションを活用して、より効果的な市民や来訪者の誘導方針を検討するなど、課題解決をめざす
・企業や研究機関との協業による取り組みを政策検討などのエビデンスに活用する
ドコモ ・課題発掘から着手し、データ活用による解決策の仮説立案と検証を実施する
・人口推定や公共交通、地理の複数のデータを総合的に可視化・分析する
理研 ・「富岳」を活用しシミュレーションによる最適化を実施する
・研究成果を都市計画などの政策検討に活用し地域に還元する

※1 EBPM(証拠に基づく政策立案):「エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング」の略称で、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確化したうえで合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすること。

※2 ライフスタイル共創ラボ:NTTドコモが研究開発を行う複数の技術を活用し、人々の生活がより豊かで便利になる技術の価値検証をパートナーと共に行う取り組みで、2021年9月より開始している。

※3 研究教育拠点(COE)事業:スーパーコンピュータ「富岳」を活用し、防災・減災や創薬など地域の課題解決等に資する分野において、Society 5.0社会の実現を見据えて進められる最先端の研究に対する助成事業。本事業により「富岳」を中核とする計算科学分野の研究教育拠点(COE)の形成と、計算科学分野の振興を図るとともに、事業の普及啓発を通じて地域への成果還元を促進する。

<参考記事>

・「都市計画や防災計画に資する、「富岳」を活用したデジタルツインシミュレーション」の社会実装に向けた取り組み
(神戸市) https://www.city.kobe.lg.jp/a93584/548011173815.html
(ドコモ)https://www.docomo.ne.jp/info/notice/kansai/page/240117_00.html
(理研)  https://www.riken.jp/pr/news/2024/20240117_1/index.html

・ウメダの未来フォーラム(2024年10月29日)
https://www.osaka-u.ac.jp/ja/event/2024/10/10955

・ドコモ
阪神・淡路大震災30年シンポジウム
「実践型」デジタルで変える!私たちの防災(2024年12月13日)
https://event.city.kobe.lg.jp/event/hjoj8F2WR09mReM71Cxq

神戸市とドコモと理化学研究所が「都市計画や防災計画に資する、「富岳」を活用したデジタルツインシミュレーション」の社会実装に向けた取り組みを実施(2023年1月17日)
https://www.docomo.ne.jp/info/notice/kansai/page/230117_00.html

【第3期】神戸市とドコモが「ポスト・コロナ社会を見据えた先進技術を活用した令和の社会課題解決実践型のまちづくり」に関する事業連携協定を締結(2022年3月11日)
https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/2022/03/11_00.html

・理化学研究所・計算科学研究センター(R-CCS)
理化学研究所
https://www.riken.jp/

計算科学研究センター(R-CCS)
https://www.r-ccs.riken.jp/
https://www.r-ccs.riken.jp/about/s5-office/

クローズアップ科学道 2023「神戸市の防災計画にデジタルツインを生かす」
https://www.riken.jp/pr/closeup/2023/20230919_1/index.html

RIKEN NEWS「神戸市の防災計画にデジタルツインを生かす」
https://www.riken.jp/medialibrary/riken/pr/publications/news/2023/rn202310.pdf

研究教育拠点(COE)の形成推進
https://www.j-focus.or.jp/project/coe.html

・神戸市
神戸市 帰宅困難者対策
https://www.city.kobe.lg.jp/a46152/bosai/prevention/preparation/kitakukonnan.html

スマートシティの取り組み紹介(スマートこうべ)
https://smartkobe-portal.com/web/smartcity/

バルセロナにもスパコンが! 世界的EXPOで神戸との共同発表が実現
https://kobe-note.jp/n/n356b16295af7