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最終更新日:2024年12月20日
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濱本氏:株式会社TIMEWELLの濱本と申します。本日はよろしくお願いいたします。まずはお二人に自己紹介をお願いしたいと思います。久元市長からお願いします。
久元市長:みなさんこんにちは。神戸市長の久元喜造です。皆様方には、大変お忙しい中このイベントにご出席いただきましてありがとうございます。神戸の紹介ですが、一言で言うと、海と山があり、まちがあります。六甲山の南側に発達した細長い市街地、郊外を開発してできたニュータウン、その周囲には里山が広がっており、ニュータウンから出た土を埋め立てて造った2つの人工島と空港などがあります。また、神戸は、阪神大水害や大空襲、阪神・淡路大震災など、色んな試練を潜り抜けてきたまちでもあります。震災から来年で30年になりますが、試練に合うごとに、たくさんの支援を内外からいただき、乗り越えてきました。私たちはそういう支援に感謝をしながら、能登半島地震地域への支援もそうですが、他の地域に対しての支援を行っています。こういう歴史がある中で、市外の企業の皆さんとも一緒に仕事をして、共通の課題を見つけながらまちづくりに取り組んでいければと考えています。
森本千賀子氏(株式会社morich代表取締役):私は株式会社morichの代表を務めておりまして、CXOと言われる経営幹部のキャリア支援を中心に行っています。元々リクルートに新卒で入社しまして、約25年間在籍しました。その間、人材エージェントとして、人と組織をつなぐマッチングに携わってきました。私のターニングポイントは東日本大震災で、明日何があっても後悔のない生き方をしたいと考え、リクルートの中にいながらパラレルキャリアを実践してきました。40歳を過ぎたあたりから何かしら恩返しをしたいという思いがあり、ソーシャル・インベストメント・パートナーズという団体の理事として、ソーシャルベンチャーやNPOの活動を応援しています。
濱本氏:久元市長、神戸市の官民連携の方針についてぜひお話を聞かせてください。
久元市長:神戸は、持続可能性をすごく意識しているまちです。特に自然との共生を大事にしており、まちと一緒に循環させながら持続させていく取り組みを行っています。一例として、「こうべ再生リン」があります。下水処理場の汚泥からリンを採取して、市内の農家に肥料として使っていただき、野菜や果物、酒米などを栽培しています。これを市民が食べて、給食にも提供して、体外に排出された後、再び下水の汚泥からリンを採取します。食料自給率を上げるためには肥料が必要であり、この技術を全国の下水処理場に広げることで、かなりのリンを国内で生産できるようになります。また、神戸の山を再生する「神戸登山プロジェクト」もスタートしました。山の中には放置された茶屋や別荘があり、また、大雨や台風などで登山道や標識が壊れることがあります。これらを再生して、たくさんの方々に神戸の山を楽しんでいただけるようにしたいと思います。もう一つは「こうべ木陰プロジェクト」です。神戸はすぐ近くに山があり、たくさんの木があるので、土壌改良しながら神戸の街中に木を移植しています。アスファルトから熱が放射され、今、夏はものすごく暑いです。ゆくゆくは、アスファルトを神戸の山から排出される木材チップや竹チップに変えていきたいと思っています。そうすると地表温度が下がり、木陰があると都会の異常高温がかなり改善されます。こういった実験の場所を神戸市は提供できますので、企業の皆さまと連携して新しい取り組みを進めていければと思います。
濱本氏:企業の皆さんと共に取り組みを進めていくということで、企業版ふるさと納税という支援の仕方もあるのかなと思いながら聞かせていただきました。続きまして、森本さん、官民連携のポイントについてのお考えを聞かせてください。
森本氏:これからより取り組みを強化していくためには、いかに民間企業や市民を巻き込むかがポイントだと思います。多岐にわたる取り組みをされており、ここに市民を巻き込むことで、もっと熱狂するプロジェクトになっていくのではないかと思います。いかに熱狂させるかが大事だと思います。
濱本氏:スタートアップの起業家の皆さんは熱狂をつくる達人みたいな方がたくさんいらっしゃるように思いますが、そういった方々の特徴や、そこから学べることなどあれば教えていただけますか。
森本氏:熱狂組織には必ずリーダーが必要で、市長と同じ熱量で話せるリーダーをどれだけ神戸市に迎え入れるかがポイントだと思います。熱量を持った方をプロジェクトにアサインできているか、そういう方といかに接点を作るかが大事だと思います。色んなところで発信されていると思いますが、企業のピッチイベントなどでは、市長に登壇していただきたいというリクエストをたくさんいただきます。スタートアップなどが熱を持って発信される場に、市長含め、職員に出向いていただくなど、待ちではなく、攻めていく姿勢があると良いと思います。神戸はハイカラ、ハイソなイメージで、ちょっと近寄りがたいので、神戸側から来ていただけると受け入れやすいです。
濱本氏:では、こういう場もやはりポイントになってくるということですね。色んなところに出ていくと、チャンスが増え、色んな声をいただいたり、フィードバックが多いかもしれませんね。森本さんの意見を伺って、市長はいかがですか。
久元市長:私は割合こういうピッチに来ていますが、私だけではなく、私を含めた自治体職員がどういう役割を果たすのかというのを説明することが大事だと考えています。しかし、説明するだけではなく、色んな意見、異なる意見を、耳を澄まして聴き、自分も議論に参加して、違う意見を積み上げながら一つの方向を見出していく。これはファシリテーター的な役割ではないでしょうか。私も時々ファシリテーターをやりますが、市民の中にもファシリテーターを養成して、ディスカッションの機会をたくさん作って、そこに企業の皆さんや、あるいは大学の研究者の皆さんにも入っていただく。市役所の職員が一方的に話すのではなく、企業の皆さんから色々提案を聞かせていただき、それを市役所の職員がファシリテートする。そういったアプローチもあるのではないでしょうか。
森本氏:私はずっと採用の現場にいますが、この10年くらいで変わったと思うのが、民間企業だけでなく、行政が中途採用に積極的になったことです。私の地元の滋賀県でも、昔は滋賀県出身の職員ばかりで、関係人口だった方が職員をやっていました。最近は全く縁もゆかりもない方が職員になっているという話を聞いて、すごくダイバーシティが進んでいるな、と。旗をあげる職員自身がダイバーシティであるということは重要だと思います。地元にいると地元の魅力やコンテンツが当たり前になってしまいます。客観的・俯瞰的に見れる方が職員として中にいて、リーダーとして旗をあげていくような組織になると変わっていくと思います。
濱本氏:プロジェクトが中々大きく膨らまないとか、継続性というのは大きな課題だと思いますが、神戸市はどのように取り組まれていますか。今後プロジェクトをより広げていくためにどうしたらよいのか、ぜひ市長のお考えを聞かせてください。
久元市長:一つのプロジェクトを続けていくことができれば、もちろんそれが一番良いわけです。しかし、これは何が何でも続けていこうということではなくて、新しい提案があれば、新しい提案を進めます。神戸は港町で、色んな新しいものを次々に取り込んできた気風があり、新しいものを創り出そうという風土があります。今後は色んな提案を外からもいただくため、神戸市の困りごと・課題をオープンにして、提案を募集して、ディスカッションして、神戸を実験フィールドとして使っていただく。実際、数年間やって、かなりの実験の結果が実装化されています。社会的に意味があるものであれば続けていく。これはまさに、森本さんが仰った、続けていこうという情熱ですよね。
濱本氏:行政の取り組みと聞くと、スピード感が遅いとか、調整が大変なのでは、という印象がありますが、その辺り神戸市はいかがですか。
久元市長:普通の行政の取り組みは、先に行政の方で仕様書を作ってしまいます。その仕様書に合う企業に入札していただいて、総合評価方式という方式もありますけれども、基本的には価格で決めます。そうではなくて、仕様書は作らず、はじめから困っていることをオープンにするんです。通常、課題があれば、翌年度の予算を要求して、財政当局が必要性などを判断し、議会の議決を経て予算を執行するわけですが、課題が発生してから実際にスタートするまで、場合によっては1年半以上の期間が普通の自治体の仕事ではかかります。初めから一定の予算をプールしておいて、もちろん議会への説明は必要ですが、何か新しい課題があれば直ちにこれを執行する、という取り組みをしています。
森本氏:市長はこれまでのパラダイムを大きく変えようとされているんですね。
濱本氏:時間がだいぶ迫ってきましたので、最後に皆さんへメッセージをお願いします。
久元市長:これからのピッチを聞いていただいて、率直な感想を私に直接聞かせてください。これから何をピッチするのか、私は何も聞いていないです。私自身も楽しみに一緒に聞かせていただきますから、まずはこれを聞いていただいて、そしてまたこの後のディスカッションにつなげていただければと思います。
森本氏:余談ですが、本当に久元市長の大ファンになりました。ぜひ調べていただきたいんですが、久元市長は幼少期から現在にいたるまでのプロフィールを細かく公開されていて、そこまでオープンにされている方っていないと思います。どんなテーマであろうと情熱を持ってアプローチされれば、受け入れていただける方だと思います。