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最終更新日:2024年12月20日
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久元市長:それでは、何も打ち合わせしていないんですが、自由に話していきましょう。鈴木さん、まずは、先ほどのピッチの間にも紹介のあった神戸市のSDGsオペレーションユニットの実態と、民間を経て神戸市に入庁して今どのような仕事をしているんですか。
鈴木智(神戸市職員):皆さん、初めまして。企画調整局の企業連携推進課に所属しています、鈴木と申します。私は東京の電気メーカーで法人営業をしておりまして、その後、Uターンで神戸市役所に転職しました。現在は企業連携調整官として、企業の皆様と神戸市の連携プロジェクトを推進する仕事に従事しています。
鈴木:神戸市では、2013年度に、自治体ではかなり早い段階に公民連携推進室を立ち上げ、企業様と自治体が連携する取り組みを進めてきました。今年度からは新たにSDGsの推進を目指す「SDGsオペレーションユニット」を立ち上げて、従来の枠組みにとらわれない新しい連携の手法や仕組みを企業の皆さんと一緒に考え、多くの方の共感を得ながら進めることを狙っています。ぜひ皆さんにプロジェクトに参加いただきたい、協働してプロジェクトを実施させていただきたいと思っています。
(神戸市企画調整局企業連携推進課 鈴木智企業連携調整官(左))
久元市長:薮崎さんも民間企業を経て6月から、神戸市で専門官として仕事をされていますが、どうですか。
藪崎ひかる(神戸市専門官):私は元々IT企業に勤めておりまして、6月に神戸市役所に入庁しました。現在は新産業創造課で、起業をしたい方の裾野の拡大などスタートアップの支援を行っています。前職では法人営業や営業企画をしており、その中で企業間の連携や企業ごとのアセットを活用してシナジーを上げていくような仕事をしてきたので、神戸のスタートアップや企業同士も積極的につなぐようにしていきたいと考えています。
藪崎:神戸市役所に入って感じたこととしては、私は前職がIT企業なのですが、やはり役所のイメージだと、まだ紙文化なのかと思っていたのですが、前職のIT企業で使っていた環境とあまり遜色ないデジタル環境などに正直驚きました。自治体の中でもDXがかなり進んでいるのではないかと思いますし、かなり市役所のイメージが変わりました。
久元市長:では、壷井さん、先ほどもピッチがあった古代小麦プロジェクトに実際に参画いただいていますが、民間の立場から参加されて、いかがでしょうか。
壷井豪氏(株式会社ケルンCEO):ケルンの壷井豪です。24年間パンのシェフとして活動してきました。国内外での修業経験を経て、循環型経済の構築への思いを持っています。古代小麦のプロジェクトについては、元々僕自身が耕作放棄地への問題意識や神戸での古代小麦の栽培の可能性を感じていたところに、たまたま関係性のあった神戸市から話もあり、必然性やシナジーを生む可能性を強く感じ、ぜひこういう課題解決を自分も取り組もうと参画しました。
(株式会社ケルンCEO 壷井豪氏)
久元市長:鈴木さん、このプロジェクトがどのようにみなさんの協力を得て進められているかということと、今後の課題や展望もあれば教えてください。
鈴木:そうですね、古代小麦プロジェクトにはたくさんの学生さんや企業の皆さんが協力してくれています。種まきから収穫には学生の皆さんが参加してくれたり、市内の牧場に液肥を提供してもらったり、小麦の製粉では、趣旨に賛同して少量の製粉でも対応してくれた製粉業者であったり、ハウスメーカーに企業版ふるさと納税をしてもらい、さらに住宅展示場をこども食堂に提供してもらってパンの配布を行ったり、一連の流れに多くの方に関わっていただいています。さらに複数の企業にも、資金的な支援を検討していただいていますが、今後は耕作を拡大するための支援・参画を期待しています。
久元市長:平松さん、このプロジェクトについてはどういう感想を持たれましたか?
平松葉月氏(株式会社キャントウエイト代表取締役):株式会社キャントウエイトの平松と申します。この古代小麦のプロジェクトについては、元々その地域で収穫されている特徴的な作物などがあって、それを拡大するというような取り組みはよく聞きますが、まず課題があって、その解決と併せて新しいものを作り出そうとして、それをさらに循環させようとしているというのが珍しく、困難もあるかと思いますが、うまくいくといろいろなことに転用できるし、拡大ができるのではないかと感じました。
久元市長:古代小麦プロジェクトに限らず、神戸市をフィールドとした官民連携の拡大について、何かご提案や思いはありますか。
壷井氏:ケルンでは3年前からツナグパンという取り組みをしています。これは、前日に売れ残ったパンを販売した売り上げからエシカルコインという地域通貨をお客さんと福祉施設に配布し、施設の子どもたちが好きなパンを自分で選んで買うことができるというものです。施設の子どもたちは、自己決定の機会が少なく、それが自立へのハードルにもなっているので、僕は彼らにいろいろな体験を提供しようとしています。作物の生産も体験し、食べ物が身近な場でつくられているということを知ってもらいたいと思います。神戸の中で経済循環してその中で社会的弱者に手が差し伸べられる、そんな仕組みを小さくても完成させたいと考えています。
久元市長:児童養護支援施設を出た後の支援は全国的にも大きな問題になっています。こちらに取り組んでいただいていることは、大変ありがたいことです。ご参加の教育・子育て分野の企業のみなさんにも協働していただきたい案件の一つです。神戸市は557㎢の面積、149万3千人くらいの人口の都市ですが、この市域の中にいろいろな顔があります。様々な資源を消費する大消費地でもあります。森林があり、農村があり、40件以上の畜産農家もあります。野菜や果物や花卉栽培の農家もいます。いちごや梨の観光農園も80カ所以上あります。神戸という都市の中に多様な顔があり、多様なプレーヤーがいますので、つなぎ合わせて循環できるのが神戸の特徴です。循環を神戸の中で完結させることもできますし、また、近隣市との広域的な取り組みも可能なところも神戸の特徴です。
(株式会社キャントウエイト代表取締役 平松葉月氏)
平松氏:私も渋谷区が官民連携でやっている渋谷未来デザインの取り組みを手伝っていますが、企業は本当に自治体と何か一緒にやりたいんだけど、なんとなくハードルが高いような気がする、と感じている企業が多いのかと思います。何か一緒にやりたくても、どこに行ったらいいのか、誰に言ったらいいのか分からないということも聞くので、今回のようにピッチをしたり、いろいろなところに出て行って話をしたりというような、外に向けて発信するということが、これからの官民連携には大事になると思います。
久元市長:民間と市役所の両方の視点を持つ薮崎さんはどうでしょうか。
薮崎:官民連携がうまく機能するには、対話が重要だと思います。現在のスタートアップ支援でも、社会課題解決を扱った結果、利益につながった事例も実感として多くありますし、民間企業にいた際もCSR活動が活発な企業でしたが、民間が社会課題にアプローチするときに、ビジョンは官と同じだと思います。私も民間側に居たときは、官との連携はハードルが高いように思っていましたが、市役所に入ってみて、職員の皆さんが外部とのやり取りにかなり積極的に、前向きに取り組んでいることを感じています。ただ、やはり目指すビジョンは共通でも、官と民ではプロセスの違うところはあるので、プロセスをすり合わせるための対話をしていくことが大事だと思います。
久元市長:神戸市は官民連携を進めるにあたり、職員の多様化を進めてきました。これまでは、法律や経済や土木といった分野で職員を採用してきました。しかし、これからは自治体が新しいチャレンジをしていく必要があり、違う発想の職員がいります。そこで、神戸市では「デザインクリエイティブ枠」という芸術系を学んだ方々の採用枠を設けています。これは、デザインの仕事をしてほしいという事ではなく、他の職員と同じように仕事をしてもらい、彼らの感性を他の職員にも取り込んでもらうのが目的です。そのほかにも、報道機関出身者、IT企業出身者などもおり、コロナ禍の際には、神戸市はワクチン接種の実施が早かったのですが、民間企業の皆さんとITに強いプロパー職員が協力してアプリ開発を行ったことで早期に開始ができました。
壷井氏:官民連携について、追加させてください。行政との連携を成功させるための僕の経験として、主観と俯瞰の両方でやりたいことを見ることが大事だと思っています。自分の困りごとを解決したいというだけでは、行政の目的と合致せずうまくいかないことがあります。しかし、多くの人も困っていて、自分も困っていることを解決したいというような問題の時には、行政も同じようなことを課題だと考えていることが多く、そういう課題の時には行政との連携がうまくいきました。
久元市長:壷井さんが課題に思っていたことを神戸市に相談されたら、道が開けたということなんですね。企業の皆様も、ピッチ案件への支援に限らず、課題解決に向けて情報収集をされる際には、多様な職員がいる神戸市役所を選択肢の一つに入れていただければと思います。
久元市長:それでは、この後会場から質問もいただきたいですし、時間も少なくなってきましたので、パネリストの皆さんから最後に一言ずつ、平松さんからお願いします。
平松氏:先ほどの壷井さんの発言も、お互いが共感できる課題であれば官民連携もうまくいくという話だったと思いますが、本当に課題に共感するという事がパワーになると思います。共感できる課題であれば、行政と企業も個人も一緒に活動できるのではないでしょうか。今ここにいらっしゃる企業の皆さんもぜひ一緒に参加してやっていけたら、新しい神戸未来みたいなものが見えてくるのではないかと思いました。
壷井氏:今たくさんの課題があると思いますが、どうしようもないね。と言っていても仕方がないので、必ず解決に近づいていくという思いを行動で示していくことが大事です。行政がプロジェクトを示して協力企業を募集するのを待つのではなく、企業側からも行政にこんな課題に取り組むので手伝ってほしいと言ったらいいと思います。民間も行政もフラットな関係性で、地域や街の人たちが幸せになれるよう、それを着地点にバックキャスティングの思考で取り組むことが必要です。ぜひ、神戸市に対してご協力をお願いします。
薮崎:先ほども話したように、官も民も目指すビジョンは同じで、ただ、プロセスのところで違いが出てくることがあります。ただ、その違いがメリットでもあると思います。官側から見える課題、民間企業のビジネス目線から見える課題、それぞれ違った視点を共有して意見を出し合いながら社会課題の解決に向けて連携していけたらと思います。
(神戸市経済観光局新産業創造課 薮崎ひかるイノベーション専門官(右))
鈴木:企業の社会貢献ニーズは高まっているが、企業がどういうポイントに共感するのかは多種多様で、我々職員は企業との対話を通じてニーズをしっかり聞き出すことに一生懸命取り組んでいます。神戸には様々なフィールドがありますし、ぜひ、神戸に足を運んでいただき、どういった人が関わっているか会っていただき、神戸に関心を持っていただきたいと思います。東京には東京事務所もありますし、我々神戸のチームもいつでもオープンな姿勢でお話しできる体制を整えていますので、ぜひお声がけください。
久元市長:今日は企業フレンドリーな神戸市になろうということで、私たちが模索している、その一端をお話しさせていただきました。
参加者A:官民連携のプロジェクトにおいて、一番大変だったことは何でしょうか?
壷井氏:パン作りの過程で、古代小麦の特性を活かしつつ市場に出せる品質を確保することが非常に大変でした。高タンパクの古代小麦を使用して、美味しいパンに仕上げるために試行錯誤を重ね、夜中に何度も試作を繰り返しました。でも、その努力が実を結び、価値のある商品として提供できるようになったことに大きなやりがいを感じています。また、プロジェクトに参加してくださった多くの方々の協力があったからこそ、ここまで来られたと思っています。
参加者B:神戸市職員の当事者意識が高いと感じました。エンゲージメントを高めるカルチャーづくり、組織作りの工夫点や、何か職員として実感されていることはありますか?
鈴木:神戸には、市民の方も行政も比較的新しいものを取り入れていくという文化があります。一方、行政はどうしても公平公正が求められるため、悪気はないが特定の企業との付き合い方に慎重になり、良い提案をいただいても悩んでしまい、なかなか前に進まないということもあります。こういった中で、組織としては、民間出身の職員の採用を全体の半数程度まで増やしたり、SDGsオペレーションユニットという開かれたチームを立ち上げたりして、民間マインドを取り入れ、様々な考え方を受け入れられる姿勢を作っています。
参加者C:リクエストになるが、中長期的に自治体と色々なプレーヤー企業が集まって活動するような場を検討いただきたい。
久元市長:本日は多くの企業の皆さんにお越しいただきましたが、もう少し少人数でフランクに議論できるような機会も持ちたいと思います。神戸市東京事務所をもっと開かれたオフィスにしていきたいと考えています。
参加者D:企業と自治体とのコミュニケーションについて、神戸市は企業と対話する姿勢をどのようにお考えでしょうか?
藪崎:自身の経験で言うと元々あるアセットを軸として話を進めると、それ以上の価値がなかなか生まれないと感じています。構想段階でも構わないので、その時点で色々話を進めていく中でいろんなアイディアが出てくると思っており、官側としても同様の姿勢が必要だと思っています。企業側からも自社の持っているサービスだけではなく、それ以外の活用の仕方も踏まえて広く相談いただけるとありがたいですし、それが新しいイノベーションにもつながっていくと思います。
久元市長:本日は皆さん、本当にありがとうございました。この後も時間が許せばネットワーキングにもご参加ください。