2024年12月4日(水曜)神戸市西区の女性向けコワーキングスペース「あすてっぷ学園都市」ロビーで「私らしさプロジェクト」の第3回ミーティングを開催しました。
あすてっぷは、子どもを保育ルームに預けてお仕事ができる利用料無料の施設で、保育ルームのドアが開くと子どもの声がロビーにもちょっと聞こえてにぎやかな雰囲気になります。
今回のミーティングでは、家庭を優先したライフスタイルを選んだ主婦の方を中心に集まっていただき、理想の生き方や働くことへの考え方などについてお話をお聞きしました。

自己紹介 家庭を優先するライフスタイルを選んだきっかけ
冒頭に、今回のオープンミーティングでもモデレーターを担当していただく神戸新聞社の名倉あかり記者から、当日のミーティングでは、神戸をだれもが住みやすい街にするために「今抱えているもやもや」や「これからこうなれば」を自由に発言してほしいという説明がありました。
続いて自己紹介。今回は、神戸市内にお住いで、家庭を優先した生活スタイルの6名の方が参加しました。
現在の生活のバランスとしては、週に3日程度パートをしている方や、自営業の方、育児休業中の方、子どもが小学校に入学後に、正社員を辞めた方がお二人、子どもが大きくなってからお仕事を辞められた方など、さまざまな方がいました。
みなさんの自己紹介の後、モデレーターの名倉さんから、子どもが小学校に入学した後に正社員を辞めたアヤコさん、メグさんに、その選択をした考え方について質問がありました。
- アヤコさんは、大阪で仕事をしていて、通勤にも仕事後の家事にも疲れが大きくなってきて、子どもと会話する時間が取れなくなってしまったことから仕事を辞め、「仕事を辞めてからは、子どもの友達やその親御さんの姿が見えるようになったことがとてもよかった」と話しました。
- アヤコさんは、子どもには近くで話を聞いてくれる人が必要で、みんなそうしてあげてほしいと思うが、仕事を辞められる環境の人ばかりでもないので、自分の子ども以外でもそういった存在の代わりになれればと思い、ファミリーサポートやこども食堂の活動をしているそうです。
- もうお一人の、子どもが小学校に入学してから正社員を辞めたメグさんは、時短勤務の制度が3歳までしか対象でないこと、また、学童が保育園と違って終わる時間が早いところもあり、親の負担が増すことを両立の課題に挙げました。また、理想としては、「子育てや介護をしている人が、残業ができない人として手を上げて、時短制度等を使うのではなく、家庭の状況に関係なく誰もが残業をしない働き方をすることが、本当は必要なことではないか」と指摘しました。
専業主婦のイメージ

続いて、モデレーターから、神戸市が大都市の中では専業主婦率が高めであることの背景や理由について質問をしたところ、皆さんからは以下のような発言がありました。
- 西区在住のヨシエさんは、「専業主婦でいられるのは旦那さんの収入が高い世帯が多いということなのかな、と思った。周りの方は教育熱心な方が多く、送迎で忙しい印象」
- 他県から神戸に移住した中央区在住のユカさんは、「神戸は東京のパワーカップルとかの感じとはまた違ってハイソな文化がある感じがする、習い事をさせている家庭も多そうなイメージで、仕事を犠牲にしないと子どもに時間をかけられないのかな」
- 垂水区在住で育休中のセナさんは、「児童館で会うお母さん方は専業主婦が多いなと感じてはいたけれど、自分の友人はほとんど働いているので、データでも専業主婦が多いというのは驚いた」
- 中央区在住のアヤコさんは、「中央区は、専業主婦は少ないイメージだけど、西区などに多そう、仕事がしやすいから中央区に集まっているのかな、子どもの学校は受験する子も多くて、受験はお金もかかりますしね」
- 兵庫区在住のリカさんは、「以前調べたときには、神戸市の世帯年収は高い方ではなかった、もしかすると見栄を張る人が多いのかも?また、働くお母さんが多い地域と専業主婦が多い地域と、地域によって変わるのではないかと思う」
- 東灘区在住のメグさんは、「他県と比べて女性の働く場が少ないとかの問題があるのでは」
ちなみに、神戸の女性の専業主婦率は20政令市中トップの32.5%です。これは、神戸市の高齢化率の高さ(一般的に高齢者の有業率は低い)が影響しており、20~59歳の女性の専業主婦率は政令市20市中9位となっています。(令和4年度就業構造基本調査)
先ほど、子どもの教育サポートに関するご発言が多かったので、周りの教育熱に焦りやプレッシャーを感じるかも質問したところ、以下の意見がありました。
- ヨシエさんは、「周囲が塾やスイミングなど行かせていると気にはなるし、スイミングだと体育の評価にかかわるのではないかといった不安や焦りも感じた。子どもに習い事に行かせることで安心感はある。住んでいるエリアは子どもが多く、受験する子も多い。中高一貫が流行ってきていて6年生で受験させるという雰囲気が地域全体にある。」
- ユカさんは、「中央区は自然遊びとか公園遊びができる場所が少ない。どこにも親がついていかないと安心して外遊びをさせてあげられない。このまちでは子どもの基礎体力を養うには不十分の印象。」
- アヤコさんは、「地域の先輩から○○を習わせているといいよ、などと先に言ってもらえるとありがたいのでは。地域に親のコミュニティがもっとあるといい。」
続いて、専業主婦は理想像なのか。「専業主婦」にどういうイメージを持っているか、以下のように皆さんの考えを聞くことができました。
- 0歳の子どもがいるセナさんは、「小学生時代は、母がお菓子を作って待っていてくれる専業主婦だった。自分の子にもそういうのをやってあげたいけど、子どもの将来のためにも働かないといけない。夢でも憧れでもあるけれども、自分にはできないとも思う」。
- 中学生の兄弟がいるアヤコさんは、「子どもを送り出して、迎え入れることをしたくて専業主婦になった。お金も稼がななとも思うけれど、こども食堂をこのまま続けたい思いもあるし、たとえお金がなくても、子ども、地域の子どもを育てるのも大事と思い、葛藤している。子どもが中学生になったから働いてもいいかなと最近思うが、子どもが小さいうちは見てあげた方がいいと思うし、私は子育てをしている人全員にそう言いたいと思う」
- リカさんは、「子どもが小さいときはバリバリ働いてきたが、下の子が高校生になって、友だちと話した時に、自分には子育ての記憶がなく、子どものために働いてきたはずだったのに何をしてるんだろうと思い、思い切って仕事を辞めた。それから双方の親の体調の問題も起きており、最近夫に再就職をもうしない宣言をし、憧れだった専業主婦生活を楽しんでいる。振り返ると、子どもが小さい時も家に居れたらよかったと思うが、貯蓄をしないと、ローン返さないと、と必死だった。理想はお金がたっぷりある専業主婦かもしれないが、現実は、お金か子どもと過ごす時間かどちらかを選ぶことになることが多いのだと思う」
- 小学生と未就学児の子どもがいるメグさんは、「望んで専業主婦を選択している方と、望まず選択せざるを得ない人がいることを考えた方がいいと思う。自分の個性やどういうことに幸せを感じるかを踏まえて、どういう生き方、働き方をしたいのかを考える必要があると思う。」
家庭を優先したライフスタイルの満足度と働くこと
続いて、皆さんのライフスタイルに対する現在の満足度と働くことに関して、以下のような考えを聞くことができました。
- 高校生と中学生の子どもがいるヨシエさんは「今は週3日のパート勤務が、家族の時間も自分の時間も取れて満足している。子どもの手も離れてきたので、将来に向けてお金貯めたい。今は受付業務だが、違う分野でもやってみたい。家にずっといるのは社会から取り残された気持ちになるし、自分のために仕事をしたいと思う。40代半ばになって、チャレンジするなら今しかないという漠然とした思いがある。他の方の活動(こども食堂)を聞いて、いいなと思った。」
- ユカさんは「日々100%満足でいたいと思っているので、気持ちとしては100%満足。子どもとの時間がもっとあったらいいというのが、さらに望むことではある。また、地域で人を育てたいという思いがあり、自分自身ももっと活動したいのに、時間が足りないと感じる。」
- セナさんは、「満足度は50%くらい。子どもを見るのは好きでかわいいけれど、今は生後3か月の子どもと一対一の状況で、話し相手もなく、社会から取り残されているように感じる。仕事をしている自分も好きだし、社会とのつながりが欲しいと思う。」
- リカさんは、「9割満足。家事が好きで、家事に時間がとれるし、そのうえでランチなどにも行ける。1割の部分は、両親4人の介護が次々にのしかかりトラブルもあり、きちんと対応はしていくが、子育ての楽しさとは違うと感じる。あと、PTAの活動などを助けたいという思いがある。」
- メグさんからは、「満足度は95%。これでいいかずっと悩み続けてはいるが、その時その時でできることは行動に移し、自分自身で都度選択してきたので納得はしている。残り5%は、次に組織に属したいと思ったときに、年齢的・スキル的に「正社員」は難しいのかな、と思っていることと、経済的なこと」
また、今後の仕事についての話が出たことを踏まえ、以下のような意見もありました。
- ご自身で事業もしているユカさんから、「みなさんの話を聞いていると、正社員は休みの自由さがないのが難しいところだと思う。子どもは急な体調不良があるので、休みづらさを気にして、やりたい仕事があっても二の足を踏んでいる方がいる。急に休みになってもスポットワークの方で補充できるとかでもいいので、もっと柔軟な働き方が社会で充実されるといい。」
- リカさんからは、「私も看護師で病院勤務していた時、保育園から子どものことで呼ばれても絶対に帰れなかった。特にまちのクリニックで看護師が1人しかいないようなところだと、代わりがいない。仕事に復帰できない理由はそこにある。働きたいという気持ちはあり、在宅ワークができるようにとPC教室に通っている。教室だけでなく、講習終了者に安全な在宅ワークの紹介までしてもらえるといい。」
感想と未来への希望

最後に、まとめを兼ねて、本日の感想や未来につながるような希望について、以下のようなご意見がありました。
- リカさんからは、「他の参加者の話を聞いて、いろいろな活躍の仕方もあり、参考になった。SNSとかで「専業主婦は楽してる」、など非難するような声もあるが、社会には専業主婦のような時間のゆとりのある人が支えている部分もあるし、その一翼を担っていけたらと思う。」
- セナさんからは、「専業主婦のイメージは「お金と時間があっていいな」と思っていたが、皆さんの話を聞いて、ボランティア活動など時間の使い方などを知ってイメージが変わった。自分が復帰したらガンガン働くと思っていたが、子どもとの時間も大切にして、折り合いをつけて働き続けていけたらいいなと思った。」
- ユカさんからは、「行政も新聞も、活字での情報提供があり、コミュニティ情報も掲載されているが、社会の活字離れを感じている。動画ベースのSNSは見やすいが、生活情報は得られない。みんなが見やすい情報発信方法があれば、専業主婦に限らず、誰かとつながりたいというときにいいのではないかと思う。」
- メグさんからは、「日本はやはり労働時間が長いので、個々の希望に合った働き方がもっと選択できるようになるといいと思う。民間企業にとっては、県や市といった公の機関にどういう制度があるかの影響は大きい。神戸市が、時代の先を行った制度を導入して、それが名ばかりではなく、実際に運用されているというようになると、民間企業の中でも説得力を持って受け入れやすくなるので、ぜひ先進的な制度を導入してほしい。」
- ヨシエさんからは、「希望としては、何かあったときに休める柔軟な会社がたくさん増えたらいいなと思う。これから子育てをする方のためにも、仕事か家族かどちらかを犠牲にしたり、周りで働く方にも気を遣わなくていい社会になれば。」
- アヤコさんからは、「今回こういった、「私らしい生き方」をテーマに、違う世代のいろんな方の話を聞けたのはとてもよかったと思う。こういう場がもっとあれば、女性は話好きだし、発散して、満足度も上がるのではないか。今日、参加の6人だけでも、こういう世界もあるのか、と思うような経験を聞けて、外に目を向けられるのがすごく良いなと思ったので、まち単位や小学校単位などでお母さんを集めてこういうことをしてもらえるといいんじゃないかと思った。」
ご出席のみなさま、いろいろなお話を聞かせていただき、ありがとうございました!