百日咳とは
百日咳は、百日咳菌による急性の気道感染症です。激しい咳を伴う病気で、どの年代でもかかりますが、子どもが中心で、近年は特に5歳以上10歳未満の患者の増加がみられます。1歳以下の乳児、特に生後6ヶ月以下の子どもは重症化しやすいため、注意が必要です。
症状
症状の経過は3期に分けられます。
※予防接種後の小児や成人では典型的な症状がみられず、軽症で見逃されやすいですが、軽症でも菌の排出はあります。予防接種をしていない新生児・乳児に対する感染源として注意が必要です。
カタル期(約2週間持続)
通常7~10日間程度(最大3週間)の潜伏期を経て、普通のかぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増え、激しくなります。
痙咳期(約2~3週間持続)
- 次第に特徴的な咳が出始めます。具体的には、短い咳が連続的に起こり、続いて、息を吸う時に笛の音のようなヒューという音が出ます。このような特徴的な咳発作を繰り返します。
- 咳発作後に嘔吐を伴うこともあります。発熱はないか、微熱程度です。
※年齢が低いほど症状は非典型的であり、乳児期早期では特徴的な咳がなく、単に息を止めているような無呼吸発作からチアノーゼ(呼吸ができなくなるために全身が青紫色になってしまうこと)、けいれん、呼吸停止と進展することがあります。合併症としては肺炎や脳症があり、特に乳児で注意が必要です。
回復期(2、3週~)
激しい発作は次第に収まり、2~3週間で認められなくなりますが、その後も時々忘れた頃に発作性の咳が出ることがあります。全経過約2~3ヶ月で回復します。
感染経路
※家庭のほか、学校などの施設でも感染の伝播がみられます。
治療
治療は、抗菌薬(抗生物質)による薬物療法です。
長引く咳がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。
マクロライド耐性百日咳菌の検出状況
- 近年、世界的にマクロライド系抗生物質に耐性を示す百日咳菌(MRBP)が出現し、特に中国では、MRBPが蔓延しており、世界各国の拡散が危惧されています。
- MRPBは、マクロライド系抗菌薬に対して耐性を示し、これらの薬剤による治療効果が低下することで、治療期間の延長や重症化につながるため、注意が必要です。日本では2018年に大阪府と東京都でMRBPが分離されましたが、その後検出はありませんでした。
- 2024年以降は単発例に加え、MRBPの地域流行の報告があります。市内での報告もあり、今後の発生状況に注意が必要です。
- 詳しくは神戸市感染症統合情報システムの病原体検出状況 統計情報をご確認ください。
予防
- 予防接種
- 手洗い、うがい、咳エチケット等の基本的な感染対策
※患者の咳から感染するため、咳の症状がある場合にはマスクを着用するなどの咳エチケットを心がけましょう。
予防接種
- 1歳以下の乳児、特に生後6ヶ月以下の子どもは重症化しやすいため、早期の予防接種が有効です。生後2ヶ月から予防接種法に基づく接種が受けられますので、生後2ヶ月を迎えたらできるだけ早めに予防接種を受けましょう。
- 五種混合(DPT- IPV- Hib)の定期予防接種(神戸市HP)
- 予防接種により、百日咳にかかるリスクは80~85%程度減らすことが出来ると報告されています。
- 予防接種による免疫効果は4~12年で減弱します。最終接種後、時間経過とともに、予防接種歴がある人も感染することがあります。
学校保健安全法での取り扱い
- 学校保健安全法施行規則では、百日咳は第2種の感染症に定められており、特有の咳が消失するまで、または5日間の適正な抗菌薬の治療終了後など、出席停止の基準が定められています。(ただし、症状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認めたときを除く。)詳しくは、学校へご相談ください。
- 参考:学校保健安全法施行規則(外部リンク)
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